アカマタ。

マダラヘビの中では最も大きい種とされています。
写真で見ると、得も言われぬ模様と色の複雑さが美しい種です。
幼体の時は黒と赤のはっきりしたコントラストですが、
成長に伴い色も模様も複雑化していきます。

が、アカマタはその凄まじく神経質(=攻撃的)な性質から、ほとんどペットトレードに乗りません。
沖縄の固有種で、ハブも食すことから神聖視する向きもあるようです。
アカマタ本体は無毒です。

私の中ではマダラヘビの中でもこの抜群に秀でた美しい存在を、
荒くてもいい、このヘビを手にしてみたい・・・
と思っていました。

が、先ほどご紹介させていただいたように、
ペットトレードに乗ることは極めて僅かのようでした。

それが、偶然時々出向くショップの在庫にアップされていました。

サイズ的にはフルアダルトのようです。

どれ程の荒さかも不明ですし、非常に悩みましたが、
日本の爬虫類、両生類のアトラスを見て改めて美しさに魅かれ
「やはりアカマタを購入しよう・・・!」
と思いました。

人気がないからという理由からなのか、
FHのボールパイソンベビー並みの価格設定でした。

電話で在庫を確認し、店舗に行ったところ、
「アカマタ、そこのプラスチックケースに入っているよ」と言われました。

静かにとぐろを巻いていますが、
刺激が加わったらどんな激しい動きをするのか未知です。

店長さんにフタを開けてもらうと、
シーン・・・
微動だにしません。

「あ、ハンドリングしていいよー」と言われ、
やや戸惑いながらもさっと手の中にすくい上げると、
静かに体を伸ばしたり縮めたりし始めました。

非常に大人しい個体だったのです。
これは後付けの「都市伝説」に近いもののようですが、
アカマタは極めて限られた地域個体群にのみ、大人しい性質のものがいるようです。

非常に美しいヘビでした。
ハブに擬態しているといわれる頭部の三角形の形も、
まるでボア、パイソンのような括れを成し、
総てが完成された美でした。

「飼い込み個体」だとのことでしたが、
これを手放した方はさぞ残念だったろうと思います。

アカマタ、全体像です
アカマタ、全体像です

アカマタの頭部です
アカマタの頭部です

頭部の括れがナミヘビらしからぬ力強さを見せます
アカマタの力強い頭部です

マダラヘビならではの模様、グラデーションです
アカマタの模様です

咬蛇姿勢です、がここからアタックすることは今までのところありません
アカマタの咬蛇姿勢です

屹立する咬蛇姿勢です
アカマタの屹立する咬蛇姿勢です

ハンドリングです
アカマタ、ハンドリングです


ここからは、生体とは直接関係のない旅行での話ですが、
アカマタが出てきたところで、沖縄へ行った時の体験を綴らせていただこうと思います。

医療関係者は「夏休み」を一斉に取ることができません。
皆で調整しながら1週間程度の休みを取ります。

以前、卒業旅行で沖縄本島に行った時に沖縄の美しさに心打たれ、
それからもほぼ毎年離島の石垣島、宮古島を中心に訪れていました。

その年は10月に休みをもらい、何となく5日程度本島を回ってみる計画を立てました。 

多くの観光スポットを回り、最終日前日
沖縄の聖地のひとつ、斎場御嶽(さーふぁーうたき)を訪れました。

オフシーズンのためか比較的観光客も少なく、静かでした。

静かな御嶽の中を歩いていると、得も言われぬ穏やかな心持ちになりました。
そして、中を歩いていると突き当りに当たる部分が現れ、
そこからは「神の島」と呼ばれる久高島(くだかじま)が見えるようになっていました。

最終日は久高島に行ってみよう、と思いました。

小さなフェリーに揺られて数十分、久高島に到着しました。 
周囲8㎞程度の小さな島です。

そこでレンタサイクルを借り、島の地図をもらって出発しました。
島の地図には「ここは聖地のため立ち入り禁止」区域が書いてあります。

地図には「サイクロード」が示してあり、それに則って走ることにしました。
集落はしんと静まりかえっています。

サイクロードとは言っても少し草や木がどけてあるだけで、
走っている途中に何度も木や草に纏わりつかれました。

走っているうちに、脇にそれる小路を見つけました。
10mの先で小路は途切れ、海岸へと降りていく階段が続いています。
地図を見ても、不可侵領域ではないようなので、海岸へと降りてみました。

降りると砂浜というより大きな岩がごろごろ転がっているような状態でした。

少し歩いてみようかな・・・と思い何気なく岩場の仄暗い奥を見た時です。
石が小さくいくつも並べられそして積まれ、その中央には人を模した絵が書いてありました。

それは祭壇というよりなにか呪いのような禍々しさを放っていました。
 「まずい・・・!」
何か見てはいけないものを見てしまいました。

うぁぁぁぁと小さい声で叫びながらたった今来た階段を凄まじい勢いで登り、
顔にクモの巣が付くのも厭わず自転車に乗り全力でその場から逃げました。

しばらく自転車を漕いでいるとちょっと心が落ち着きを取り戻し始め、 
フボー御嶽という聖地の一つを訪れることにしました。

フボー御嶽の近くまでくると、藪の中から
「ほー、ほー、ほー、ほー」
という音が聞こえてきました。

「鳥かな、あるいは人の笛の音かな・・・」などと思っていましたが、
不思議なことに一切移動する気配はなくその音は真横をついてきます。
鳥にしても人にしても一切葉が擦れる音などもなく移動してきます。
ほんの2mほどのところなのですが、姿は全く見えません。

フボー御嶽に到着しました。
大きな丸太が置いてあり、「丸太から先は立ち入り禁止」と看板が掲げられています。
丸太には一切近づかないようにして、全体を眺めます。

丸太の向こうは少し開けた森、藪、になっています。

静かな中に
「ほー、ほー、ほー、ほー」
という音だけが響きます。

何となく不安になり、自転車に乗ってその場をそっと立ち去りました。 

出発点に戻り、レンタサイクルを返しました。
気付けば手足はかなり日にやけており、体全体は非常に怠くなっていました。

次の連絡船が来るまでポカリスエットを飲み、
体を休めつつ日陰から海を眺めていました。

「御嶽や久高島は観光客が気軽に興味本位で行く場所でないな・・・」という印象でした。
そこは今でも沖縄の人々の崇拝の対象、聖地、神であり、
心の拠り所であります。

ちなみに、「アカマタ」という言葉そのものは解釈が分かれるものの、
現地における神の名の一つのようです。
アカマタを祭る祭事は住民ですら見ることが許されず、
アカマタが家々を回る間、
家に閉じこもって忌み憚ることが求められるそうです。

アカマタ、
今年一番の出逢いかもしれません。